合気道には「座り技」というものがあるが、他の武道にはない。 *但し柔道には寝技があるが、それとはかなり異なる。
【疑問】最近はあまりやらないようだが、必要ないのか
(1)数十年前、私が合気道を始めた頃は、技に入る前に座って道場を何周もさせられた。 白帯(袴をはいていない人)の道着の膝は血がついていたり、固まったりして汚れていたし、よく膝がすりむけるので、膝当てのようなものもつけていた。
何故、座り技をこれほどやらせるのか判らなかったが、当時学生時代に体を鍛えるという名目でやらされていた意味不明で膝を悪くするだけの<ウサギ跳び>のようなものだと思っていた。
(2)昔の道場では先輩に、「<座り技>はなんの為にあるのですか」というような質問ができる雰囲気 でなかった。
他のスポーツでも、監督やコーチ、先輩の指示に<黙って従う>というのが文化だったからだ。 それはスポーツだけではない、社会の全てが「上からの指示」に「黙って従わなければならなかったからだ」
(3)しかし、後で知ったことだが、開祖は「座り技」に力を入れていた。 「大先生は弟子が座り技をしていると機嫌が良かった、だから立ち技をしていても大先生がみえるとすぐに座り技をしていたふりをした」と開祖の直弟子が話していた。
【では、<座り技>に何の意味があるのか】
1.現在では<座り技>は殆どやらない。 <合気道>というと、「護身術」とか「相手の腕を持って投げる技」というイメージが強く、それが格好良く見えたりするので、座り技は殆ど見たことがない。
(1)おそらく「座り技」をやる意味がわからないからだろう。 もしそれがとっても<効果的>なら、どこでも一生懸命稽古をさせるだろう。
(2)では何故「<座り技>があったのか」をネットで調べてみると以下のようなものが出てくる。
①日本は畳が生活のベースだったから ②殿中で立ちあがって無礼者を抑えつけるのは<非礼>とみられたから ③インナーマッスルを鍛えるため ④下半身の鍛錬の為 ⑤不意の攻撃に対して、座った姿勢から対処出来るようにするため
・・・・・・・といったことがネットに書いてある。
(3)しかし、①「畳があったから」とか②「殿中技だ」とかいうのなら、今は全くやる意味がない。 ③「インナーマッスルを鍛える」④「下半身の鍛錬」というのはあるかもしれないが、もっと適切な鍛錬方法があるのではないかと思う。
2.では、何故開祖は「座り技」を好んだのだろうか。
(1)私の感覚では「座り技」は<四股>と同じような意味があるのではないかと思う。 <四股>を重視する武道家やスポーツマンは多い。
・大東流合氣柔術の伝説的名人と言われた佐川幸義宗範やその弟子達は鍛錬として<四股>を踏むのを重視していた。 ・大リーグで活躍したイチロー選手も<四股>踏み(腰を割るストレッチ?)をやっていた。 ・そして相撲でも<四股>は不可欠な稽古と言われている。
<四股を踏む>効果として
・基礎代謝があがる ・体幹を強化する ・ヒップアップにつながる ・ケガをしなくなる 等があるといわれているが・・・
私の経験では「腰が割れるから」だと思う。
(2)具体的に言うと、「腰が割れている」と歩くとき、右足が支えるのは腰の右側の重さだけで、左足が支えるのが左側の腰の左側の重さだけになる。
当たり前のように聞こえるが、「腰が割れ」ていないと、右足を一歩前に出したとき、その右足に腰全体の重さが乗ってしまう為、次に左足を前に出すとき、その右足で地面を蹴らなければならなくなる。
そこに「居着き」が起こる。
「腰が割れる」と右足を着いている時、次の一歩で左足を出すときには、右足を強く踏みしめなくても、右足の踏み込みでなく、左足を振り子のように前に振ることで前進出来る。
このことが判ったのは、合気道をやっているとき、「相手が自分の腕をつかんでいるとき相手の腕を通して腰の重さが丸々かかっていた」のと、「正面打ちのとき、相手が打ち込むとき体の上下動が大きかった」のと、「重心が左右に揺れ」、また「自分より一拍子タイミングが遅かった」ので、何故だろうと考えたからだ。
その後もいろいろな技をやっていて、あまり上手くない人と自分との違いに気づくようになった。
そしてあまり上手くない人は「腰が常にひとつに固まったまま動いている」のに気づいた。
3.開祖はそんな分析などしていないだろうが、「座り技」をやらない人の動きがギクシャクしているのを見て感じたのではないだろうか。
※そういえば、現代でも居合いの達人と言われる黒田鉄山氏が「座構え」の「浮き身」の姿勢から刀を抜く時に、右足をそのままで左足を腰から反転させているが、それも同じことだと思う。(2) 黒田鉄山 0.1秒の抜刀 神速の民弥流居合術 Kuroda Tetsuzan – YouTube(1分47秒のところ)
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