最近合気道をやってみたいという人が多くなっているようなので、そういった人の疑問に答えてみる。
【質問】 大体以下のような質問が多い ①何歳くらいまで出来るのか ②体力・健康に自信がないが大丈夫か ③ケガをしないか ④女性でもできるか ⑤国内外のどこの道場でも稽古を出来るのか ⑥何故、試合はないのか ⑦合気道で強くなれるか ⑧護身術になるか ⑨心を鍛えられるのか ⑩合気道の目的は何か
①~④はスポーツ的に考えた、体の心配・・・自分でも出来るだろうかといった事 ⑤~⑩は武術としての問題
【解答】 順番に私なりの経験をもとに答えていきます。 ①何歳まで出来るか・・・小学生からお年寄りまで。海外でも年配の人もやっています。 ・合気会本部師範の多田先生は93歳で指導されています。(コロナ前はイタリアでも指導) (参考)⇒(2) 【合気道最高段位】多田宏【御年89歳】 – YouTube 「合気道は、命の力の高め方、保ち方、使い方を身につける道」(合気会本部 師範 合気道九段 多田宏 (特集 深さを知る)『道』第153号木村郁子(共著)) ・多田先生の著書やDVDはこちらです。「合気道に活きる」「気の錬磨」「合気道技法全集Ⅰ、Ⅱ」 ・合気道開祖植芝盛平翁は死ぬ前が一番強いといい、それを見せている。 植芝盛平 85歳 生涯最後の演武 合気会本部道場 Ueshiba Morihei The Last Enbu [Master of Aiki] – YouTube ・漫画「刃牙」の渋川剛気のモデルとされた塩田剛三先生は最後までその実力を見せている。 塩田剛三 最後の指導 vol.1 合気道養神館黒帯研修会の記録 SPD-8221 – YouTube
②体力・健康について・・・その人の体に合わせた稽古が可能です。 ・私が始めた動機も病気がちだったからです。おかげで普通の生活が送れるようになりました。 ・合気道は筋力を養成するものではありません。 ・むしろ体の隅々まで気をめぐらせ、神経を研ぎ澄ますのに役立つような稽古をします。その結果、おそらく血流が体全体にいきわたるのではないかと思います。 それ故、稽古も全力で必死になってやるのではなく、ゆったりした呼吸に合わせて、自然に体の力を抜いて行います。 イメージとしては太極拳のような感じですが、あれほどゆっくりではありません。相手があるので、お互いの動きに合わせます。どちらかというとダンスのようなイメージです。
(参考) 2015年の記事ですが、ロシアでショーロホフ記念モスクワ国立人文大学、ノヴォシビルスク民族研究国立大学(略称「ノヴォシビルスク国立大学」)、連邦国立生理学・基礎医学科学研究所の研究者達 の研究結果では色々なスポーツや健康法の中で、合気道が最も老化現象を抑えられると発表しています。 「年をとってからも身体の運動調整機能を失わず、脳の活動を活性化するには、足の親指を使ったトレーニングが必須で、その最良のものは合気道だった――。このことが、最近のロシアの学者による研究で裏付けられた。 年齢とともに、身体の平衡を司るシステムの働きは悪化していく。 だが、この老化現象の進行を遅くするばかりか、逆転させることさえ可能だとロシアの学者達は考えている。そのためには、合気道をやり、親指をふくむ、足の前のほうへの負荷を増やせば、それで十分なのだという。」 詳細⇒ 合気道の意外な効用 – ロシア・ビヨンド (rbth.com)
③ケガについて・・・殆ど聞いたことがありません。 それは相手の体の動きを理解しながら技を掛けあうからだと思います。 また勝敗を目的とせず、相手の動きを察知する事が大切なので、独りよがりに自分の力まかせに投げるという事は通常ありません。 ただ、無理に技を掛けようとして捻挫をしたり、受け身が下手で体を痛めたりすることはありますが、それは他のスポーツでもあるようなレベルです。
④女性でもできるか・・・出来ます。 女性で稽古されている方が他の武道より多く、瞬発的な筋力を使いませんので女性に適しています。 一般的には・・・男:女=3:1程度だと言われています。
⑤国内外のどこの道場でも稽古できるか・・・流派によります。 合気道は植芝盛平先生が創られたもので、当初は開祖が所属する「合気会」だけでしたが、その後塩田剛三先生が主宰する「養神館合気道」や、藤平光一先生が主宰する「心身統一合気道」が出来、更にいくつかの団体が出来ました。 現在おそらく合気道の道場の7割くらいが「合気会」に所属していると思います。 同じ会派なら、通常は稽古出来ると思いますが、これだけ普及してくると色々な考え方の指導者がいますので、道場を変える時は現在通っている道場の先生に尋ねた方が良いかと思います。 現在所属している会派の「段や級」については、異なる会派だと認められないケースが多いと思います。
⑥試合がない理由 そもそも合気道は他人との優劣を競うスポーツではなく、心身の錬成を目的としています。 従って、筋力や瞬発力や体が大きいので相手より強い・・・といった事は考えていません。
⑦合気道は強いのか…という事がよく言われます。 ネットで検索すると「合気道は弱い」「役に立たない」といったようなことが書かれています。 これは「ケンカの道具になるのか」、「護身術として役立つか」といった事で疑問を持たれている方もいます。 また、試合がないので「どちらが強いのか」が見た目でわからないという事もあります。
合気道をやったから、「相手より打撃が強くなった」とか「瞬発力がたかくなった」といった事は通常ありません。 ただ、私の経験では相手を恐れなくなった、かかって来ても落ち着いて対応出来る。というそれなりの自信はついています。
◆では、実際に暴漢が殴りかかってきた場合どうなるか・・・というと おそらく体捌きで避けて、相手がバランスを崩したところで抑えるという事になるのではないかと思います。筋力を強くすればいいという事ではないので、そのような事が出来るにはかなりの修練が必要だと思います。
・私の経験では、別に誰かに襲われたり、殴りかかられたりしたわけではありませんが、道場で普通でない人(元外国の軍人)の相手をしたときに自然に体が動き、相手の方はタイミングを外されて、自分から倒れてしまったような感じでした。(私の体が無意識で反応しましたので)
・塩田剛三先生が言われていた「実際には体捌きと当身」というのが理解できたような思いです。 ・それは木村達雄先生(合気道5段、大東流合気奥伝4段)が「合気修得への道」で書かれている事ですが、ケンカを売られた時に相手の動きと異なる感覚で対応したのと同じ感じではないかと思います。 (新版 合気修得への道 | 木村達雄 |本 | 通販 | Amazon)
⑧護身術になるか・・・むしろこちらの方が上記理由から役立つと思います。 合気道は攻撃には適していませんが、相手がかかってきた場合は対処しやすいと思います。 合気道で重要なのは、自分の中心線(塩田先生の言葉)を維持しながら、かかって来る相手は既に重心が崩れているので、そのバランスを崩すのはそれほど難しい事ではないからです。
⑨心を鍛えられるか・・・他の武道でもよく言われます。 私の感覚からすると、「武道」でよく「心を鍛える」とか「精神が鍛えられる」という事を言われますが、疑問に思います。 「武道」と言われるもののなかには、竹刀で頭を叩いたり、足で相手を蹴とばしたり、道着を利用して首を絞めたりしていますが、果たしてそれが「心」や「精神」とかかわりを持つようには思えません。 それは<そのような競技>というジャンルでくくるしかないと思います。
「合気道」については、私の経験からすると「心が穏やかになる」とか「気持ちが落ち着いてくる」といった事はあると思います。 それは合気道の稽古方法自体がそのようにさせているからだと思います。 もしかしたら「お茶」や「お花」といったものに近いかもしれません。
合気道の稽古で重要視されるのは、「肩の力を抜くこと」、「相手に合わせる事」、「ゆっくりと呼吸する事」、「臍下丹田に気を置くこと」・・・と様々な先生方が説明されています。 いずれにしろ、相手と対立し、相手と闘う事を目標としせず、自分と向き合う事が要求されますので、その結果、「心が穏やかになる」とか「落ち着いた所作が醸成される」という事はあります。
私自身、仕事や他の事でイライラしている時はよく道場に行きました。実際稽古が終わった後は気持ちが穏やかになり、<スッキリ>しました。これはただ、ストレスを発散したからだというだけではないと思います。 *海外では合気道の事を「MOVING ZEN(ムービング・禅)」と言われることもあります。
⑩そこで合気道の目的は何か・・・という事になります。 (各会派により異なる) ・合気会では「合気道は相手といたずらに強弱競いません・・・心身の錬成を図るのを目的とします」 ・心身統一合気道会では「臍下の一点に心を静める」ことを体得する。 ・養神館合気道、塩田剛三先生・・・「日々、合気道の素晴らしい技を修練することによって、その深遠なる和の理合を身心に宿し身をもって和合を実践することこそが、二十一世紀に向けての合気道の役割だと私は思います。(塩田剛三調著「合気道修行」)」
◆私は、「健全な体を維持し」、「護身術として役立ち」、「落ち着いた心を保つ」・・・と言った事を目的としています。
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