今から半世紀前に高校を卒業して大学に入った。 都立高校に在籍していたので当然、大学入試がある。 しかし、当時は全共闘運動が盛んで、高校三年生の2学期から僕のいた高校でも受験体制を組んでいる高校の体制批判に始まり、ベトナム反戦運動への高校生の参加など政治的なテーマも問題になり、授業はボイコットされ受験勉強はおざなりになっていた。 そしてクラス討論会や全学集会が開かれ、高校は勉強(特に三年生は受験勉強)をするという雰囲気はなくなり、騒然としていた。
高校三年生の2学期には当時流行ったマルクスの「経済学・哲学草稿(別名:経哲草稿)」や「ドイツイデオロギー」といった本を読んだ。 今読んでも理解出来ないが、当時寝ながら読んでいると感動して興奮し寝られなくなり、朝まで目が冴えた。 そして朝布団から起きると、すぐにヘルメットに鉄パイプという当時の全共闘系学生のスタイルで闘いに行きたくなった。
三学期になると大学受験が目前に迫り、クラス討論会などもなくなり、クラスは自習という名目で生徒は自宅で勉強し、ただ受験の願書をもらいに学校に行くだけになった。
大学の入試会場はどこも機動隊に囲まれていた。 中に入ると所謂「タテ看」といわれる板に「大学の管理体制を打破」「ベトナム反戦集会。5.11.代々木公園に結集」「大学は自己批判せよ!」といった勇ましい言葉がカナクギ文字で描かれ林立していた。 大学の多くは学生により封鎖されているはずだったが、何故か受験会場はしっかりと確保され、また学生の活動家達も大学受験の妨害を行うことは全くなかった。
幸い進学校だったので、高校三年の二学期から受験勉強は中断していたが、入試直前の勉強で思い出しなんとかなった。
しかし、高校三年生の三学期は授業らしいものもなく、卒業式もなかった。 当時の雰囲気としては、卒業式を開いても学生が参加するかは疑問であり、また「卒業式ボイコット」の垂れ札が掲げられたりするのではないかと思われていた。 結局、3月の末になって、家に卒業証書が送られてきただけだった。
その後大学という新しい世界に入っていくのだが、卒業式がなかったということが、どこか踏ん切りの悪さが残った。
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