新興宗教の誘いに・・・注意!!                           大学に入って、油断してはならない事がある

昭和の男

高校までは親や先生がお膳立てしてくれたレールの上を走ればよかった。                   しかし、大学では全て自分で選択していかなければならない。                                                                                                               やたら親切にしてくれる人についていくと,<とんでもない事>になることもある。                        

◆注意しなければならないのは「うまい話には裏がある」という事だ。               

今、社会で騒がれている宗教団体は、私が大学生だった半世紀前から要注意団体だった。 

                                                               大学にはいったばかりで、右も左もわからない時、授業が始まる前に突然一人の大学生(3,4年生くらい)が大教室に入って来た。                                            そして、いきなり「世界中で公害が問題になっており、環境保護の大切さが叫ばれています。我々の会は、このような社会を良くしていく為の活動をしています」といったような演説を始めチラシを配りだした。    

                                                                                                        最初はどこかのサークルのオリエンテーションかと思っていた。                         しかし、すぐに先生がやって来て彼を追い出した。                                                                                                     

◆それから2週間くらいたった時、キャンパスの中で可愛いい女の子に声をかけられた。

「公害をなくし、自然の大切さや環境問題を考える勉強会に参加しないか」と誘われ、チラシを渡された。                                                 それには、環境問題を考えるだけでなく、ハイキングに行ったり、フォークソングを歌ったりする楽しいイベントもあると書かれていた。  

その可愛い女性は「入ってください」といって、僕の目を見つめて、手を<ギュッ>と握った。                                                                             その瞬間、頭の中がカッと熱くなり、「はい」と無意識に返事をした。    

高校生だったとき、学園紛争の中でもギターを弾いて、男女が一緒にフォークソングを歌った楽しかったひと時を思い出した。                                    

1968年に水俣病が公害病と認定されて以来、高度経済成長が生み出した公害に対する反対運動は大きくなっていた。多くの若者はそんな社会に批判的となり学生運動のテーマともなっていた。                           大人達の造った文化や価値観を否定し、中にはヒッピーにように現実社会から逃避する者もいた。                                   そんな時代だったので、「自然、自由、環境」をテーマにしたサークル活動が流行っていた。                 そして、新たな自分をさがすようなフォークソングも流行した。                                      岡林信康の「友よ」とーもーよー – YouTube                                赤い鳥の「翼をください」赤い鳥 – 翼をください – YouTube                         吉田拓郎の「人間なんて」人間なんて 吉田拓郎 – YouTube                                  ジローズの「戦争を知らない子供たち」【1970年・歌詞付き】★ジローズ さん~「戦争を知らない子どもたち」(作詞:北山 修 さん、作曲:杉田二郎 さん)……1970年当時の風景映像がバックに流れています★ – YouTube 五つの赤い風船の「遠い世界に」高田渡・五つの赤い風船 遠い世界に(歌詞付き) – YouTube                                             

◆次の週、サークルの親睦ハイキングがあるというので参加した。         

サークルは十数人参加したが、誰もがやさしく、可愛い女性が多かった。                              そして昼食になったとき、先週会った女性が「自分で作った」というお弁当をくれた。                                                                                               親以外の人が自分の為に弁当を作ってくれるなんて初めての経験だったので、感動し興奮した。                             

◆それから数日後、渋谷駅近くの高級そうな喫茶店(?)に呼び出された。                     

その女性は、このサークルに入れるのは、「選ばれた人だけ」で、自分が選ばれたのは「清らかな魂の持ち主だとわかったからだ」と言われた。   

                                                             思いもよろないほど持ち上げられて、恥ずかしかった。                      しかしその可愛い女性に自分が認められた思い、嬉しかった。                                                               

更にこのサークルにいる人は「みんな、あなたと同じ様な清らかな魂の持ち主ばかりなので、他の人にこのサークルの事を話すとおかしな人が入ってくるので、秘密にしてね。約束よ!」と言われた。 

                                                                       可愛い女性に「秘密にしてね。約束よ!」と、自分だけが特別扱いされたと勘違いした二十歳前の世間知らずの男の心は、<情けないほどヤワ>だった。                                                                           

それから2度ばかり、多摩川の近くにあるセミナーハウスのようなところで、公害問題について話し合ったり、当時人気のあったレーチェルカーソンの「沈黙の春」についての読書会が持たれた。  

 しかし何かそのために具体的な運動をしようという事もなく、どこか足が地についていないような<フワフワとした変な違和感>が残った。 

◆そしてひと月経った頃、サークルの総会が開催された。                                                総会はこれまでのような楽しい集まりでなく、「本年度の人員獲得」とか「新しい活動方針」について、といったどこかセールスマンのような話がリーダーから一方的になされた。

説明している者は以前大教室にいきなり入って来て演説を始めた男性だった。

◆それから数日後、スキー部の活動が終わった後で先輩が「最近また<例の変な宗教サークル>がキャンパスに入ってきている」と言った。                                      他の上級生も「一年のとき、キャンパスで可愛い女の子から声をかけられたので、ついていったら変な宗教の勧誘だった」といって笑った。                                       

友人が「どんな人たちですか」と尋ねると、                                     「<自然保護や環境保護>を名目に、<ハイキングや音楽イベント>なんかで、田舎から出て来たばかりの世間知らずの新入生をひっかけるのだ。                                しかし、その女性がスタイルが良くて可愛いので、誘惑されるバカな奴が結構いるんだ」と言って笑った。                                                                                                  そして彼らはこの大学の学生ではなく、その宗教団体のリクルーターだと教えてくれた。

「まちがっても、そんな連中に引っかかるなよ。あいつらしつこいし、弱みを握られたら終わりだから」                                                                      上級生がそういって、僕の顔をチラッと見た。                                             

一瞬顔が強張った。

◆それ以来、その学外にあるサークルのたまり場には行くことはやめ、彼女からの誘いも断った。                                                                          しかし、ハイキングに一緒に行った時、握った彼女の柔らかい手は忘れられなかった。

                                

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