雪が積もる

昭和の男

夕方には天気予報で積雪は3㎝と言っていたが、5センチ以上は積もっていた。それまで茶色だった土や木々、そして家々も真っ白な綿帽子を被り、外を歩く人もなく、車もチェーンをつけてシャリシャリと音をたてながら時々走っている。何となく心も真っ白に静まり落ち着いてくる。

小学校の頃は校庭に出て先生と一緒に雪ダルマを作り、雪合戦をした。ただ、ただ、子犬のように走り回り楽しかった。高校の時は降り積もる雪の中でサッカーをやった。               当時学園紛争で黄色いくちばしを尖らせてお互いを批判(非難?)し討論会を開催していたクラスメイトもこの時ばかりは別だといわんばかりに校庭を走り回った。ボールを蹴るたびに雪が付着して不規則に転がる。思いっきり蹴ったつもりが、足を滑らせて転ぶ。                    キーパーが飛んできたボールを受け止めるとバシッと音がしてボールに着いた雪が飛び散り、ボールが足元に落ちる。ゴールと思ったら、その手前で止まったので、それをめがけて体ごと滑って蹴り入れた。雪が降るとみんな興奮した。それが終わると、もう討論会はやらなかった。

大学に入り、冬休みになると毎年スキー旅行に行った。列車に乗る前から心が踊っていた。暫くの間はお菓子を食べながらトランプやゲームやお喋り。いつのまにか長いトンネルに入った。                  トンネルを抜けると、そこは真っ白な銀世界。みんなトランプやゲームを手にしたまま、黙ってその真っ白な世界に目と心を奪われ、静かに興奮していた。                      それからすぐにそれらをバッグにしまい、列車を降りる準備を始めた。                「国境の長いトンネルを抜けると雪国だった」川端康成の名作「雪国」の一節が頭の中をよぎった。

残念ながら「駒子」のようなしっとりした女性は周りに見当たらなかった。

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